次季コレクション発表に向けて。

こんにちは、知美です。
世間がこんなにも敏感な時期に風邪を引いてしまい、PCR検査では問題ありませんでしたが、思いのほか咳が長く残ってしまい、肩身が狭い思いで過ごしている次第です。
二度目の緊急事態宣言に、肩を落とした方は多いのではないでしょうか。

本当に人の考え方というのは面白いものだと思います。
視点が違う人からしたら、「何を言っているんだ」というような事だとしても、フォーカスが合っている人には地味に響いていることがある。
そして、一歩でも前に進めば、見える景色の角度が変わり、同人物でも違うことを言ったりする。
今はこういう時代ですから、本来正確には残らない事だとしても、デジタル機器にかかれば記録し、検索し、比較でき、匿名であーでもこーでも好きに言えたりして恐ろしくも感じる「自由」なのか「不自由」なのかわかりにくいバーチャルのような時代を生きている気がします。

山内のデザイナーもいつからかすべてを発言しなくなったのは、なんだかスマートで賢いような。そんな印象すら受けますが、努力は人に見せるものではないし、その過程を他人に評価してもらう必要もない。
10年近く毎日一緒に居ますが、侍?武士?に見える事が時折あります。
いつもそうですが、休憩中に本人が話し出すと、皆が耳を傾けます。
こんな時代に絶滅危惧種にも近しい違和感すら感じる時もあったりして・・・。
遠い昔に父から言われていた耳が痛い話ではありますが、友達を選びなさい。という一見冷たそうにも思えますが、今となっては優しさが感じられる年にもなりました。

今は選択肢が多すぎるからこそ、すべては『見抜ける』かどうか。かなぁとも思ったりしています。
軽そうに言っていても本心が読み取れるかどうか。一見ニセモノ風だけど隠そうとしているだけで実は本物だったり。
自分を偽れば偽るだけ、心にしこりが残ったり。また、居場所を探したあまり三次元に戻れなくなっている人がいるかもしれない。
すべての方向の人を配慮して守ることはできないけれど、私は蔓延した世界の中でも、必要としていただけることが支えとなり、励みとなり、存在意義を確認でき、また先に進める。そんな気がしています。

自身のブランドを営み、私たちの中で年に2度の発表は、いつも命懸け。
コロナ渦で人命第一と文化や国に関係なく地球上で共通認識されている中で、洋服のコレクションというものは不必要だと言われるのかも知れませんが、私たちが発表することで、心を救いたいし、今後の世界へメッセージを発信したい。
だからこそ、今も新作発表のためのサンプル製作を、朝も晩も。来る日も来る日もアナログに手を動かし試作しています。

正解というスタイルが無くなり、混在する雑音だらけの日々の中で、絶望しかない。弱気になるとそんな風に心の声が出てきそうですが、絶望だからこそ “ファッション” や “アート” というわかりにくいものから得られるものもある。そう信じたいという想いです。

本物。そして真実。これは辿り着こうとしない限り、目を背けていては一向に解決しない、凄い「怪物」の様でもある。
私はこうやって山内の一員でありながら、洋服を通して、いざという時の仲間が一人ずつ増えていくことを期待して止まない。

まだ知らない誰かが魔法を使って、幸せな世界にしてくれるのを待つのではなく、それに向けて土を耕し、種をまき水をやり、誰かが見ていなくてもじっくり年月を重ねて、収穫の時期を待つ。失敗しても上手くいくまで改良を続ける。
そんな当たり前の忍耐もないようでは、いい結果は得られない。ただシンプルにそれだけの事に思う。
欲を出してショートカットをしようとするから、浅はかな結果ばかり得る。それは自業自得だし、成れの果て。
こういう時だからこそ、すべて『明確』になる。

日本も格差社会に突入したと言われていて、中間層が分断されるらしい。
アメリカの10年後が日本の姿だと言われて何年経つだろうか。そろそろ考えて動かなくてはいけないと思う。
前例があるのに放っておくということは、それを選んだということ同じ。
ただいつも思うことは、一人でできることはとにかく小さすぎる。
だからこそ、変に思われようと、心の叫びをさらけ出し、ある程度の足並みを揃える必要があるのではないか。
これは山内の服を買ってほしいという事とも違う。
山内の服は所有していなくとも、居場所は遠くとも、共鳴できる分母が広がることは、何かの気付き。将来の革命にも近い思考だと私は感じています。

楽して良くなるわけがない。

人間の意志なんて弱いものだからこそ、みんなで意識改革が必要に思ったり、日本の空気感の風向きが1度だって変われば兆しになる。
誰かになろうとするのではなく、自分の良さを伸ばすこと。
集団行動をすることで日本人は能力が開花するはずだから、個の自由とかいう無責任なフレーズに踊らされず、今少しだけ頑張れそうな “意味のなさそうなちっぽけな事” から淡々と始めてみる。
夢を持つ100人の中で、実際の行動に移せる人は約1%だと本で読んだ。だから私はチャンスとしか思わなかったし容易かった。

くだらないと思う人、やってもどうせ・・という人、いろんな人がこの世には生きていると思うけれど、私はこの命を活かしたいと思っている。
人生をかけて何かを伝えたい。何かを残したい。だから、変なタイミングでの次期・春夏コレクションになってしまい、アパレルブランドとしては異様かと思いますが、是非とも発表の時まで楽しみにしていただけたら。と、声を大にすることはできませんが、チームを代表して、そう強く願っています。

作 / 山内 知